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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体



そんな欲まみれの大嫌いな男の人たちの中に、たったひとり、少し変わった人がいた。

彼はとてもイケメンだった。かなりハイクラスのイケメン。

高身長でスラッと足の長い細身の体型。タバコを吸うこともなく、お酒を飲んで来ることもない。

ほんのりと香るムスクがいつも私の鼻をくすぐった。

シワのないスーツ、清潔感のあるサラサラの黒髪。

はじめて彼と会った時は驚いた。彼は絶対にモテるはずだから、こんな場所とは無縁のはずなのに。

お金を払って女の子と遊ぶ必要なんてないはずなのに。

それに彼は欲望丸出しで私に飛びついてくることはなかった。

はじめて彼がフリーの指名なしで私の部屋に入った日。

彼はスーツの上着を脱いでハンガーにかけると、私に一切触れることなく、ベッドに浅く腰掛け長い腕と足を組んだ。

「名前は?」

「ななみです!」

けれど動揺を見せることなく、マニュアル通り私はニコニコと接客する。

「歳は?」

「18歳です」

「ふーん、若いな」

「はい、この店の最年少なので」

「そうか」

彼はそれだけ聞くと、ネクタイを手で緩めて組んでいた腕をほどいた。

その仕草が様になりすぎて、私はついキュンと胸をときめかせてしまう。

今まで客に対してそんな風に思うことは一切なかった。

そこそこかっこいい客が来ることはたまにあったが、それでも私の心が動くことはなかったのに。



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