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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体


「とりあえずお前も座れ」

彼はトントンと自分の座っている横を叩いた。

「はい、失礼します」

私は彼に密着するように座り、すぐに腕を絡ませる。

これがマニュアルだから、こうしろと言われているから。

「お前、バカそうな顔じゃないな」

「え?」

「そのキャピキャピしたキャラは、お前の本性じゃないだろう?

店のマニュアルか?疲れそうだな」

「べ、別にそういうわけじゃないですよ。

プライベートでもこんな感じで……」

「客からの命令だ、普段通りに話せ。

俺はこの店の風俗嬢としてではなく、お前をひとりの人間として見てみたい」

「……わかり、ました」

客の要望に応えないわけにはいかない。私はキャピキャピと女の子らしくしゃべるのをやめた。

本当に変わった客だ。ここに何をしにきたんだろう。

先ほどから私に一切手を出そうともしない。

「あの、こんなこと聞くのは変かもしれないですけど

お兄さんモテるんじゃないですか?」

「お兄さんはやめろ、類でいい」

「…あ、はい、類さん」

「ん、それでいい」

彼は満足したように小さく笑った。



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