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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体


「それにしても、こういう店の女も、それはそれで面倒だな。

みんな対面した瞬間すぐに抱きついてくる、キスをせがんでくる。俺をリピーターにしようとする欲望が丸見えで萎えるな」

彼は呆れたようにため息をついた。

対面した瞬間に抱きつくのはこの店のマニュアルだ。リピーターを増やそうとするのはこの店で働く唯一のやりがいに繋がるから、みんなそうして当然だった。

欲望を丸出しにしていたのは客の男性だけじゃない、店の女の子も同じなんだ。

「けど、お前は、対面してから部屋に入るまで何もしようとしない。何もせがんでこない、ガツガツしてなかった」

彼はついに私に手を伸ばした。

指でくいっと顎を上げたかと思うと、整った顔を近づけ、チュッと小さく口づける。

キスがこんなにドキドキするものなんて、今この瞬間まで知らなかった。唇に感じたこの体温がこんなに愛おしいものだと、今この瞬間にはじめて知った。

今まで、気持ち悪いものでしかなかったのに。金に変えるための行為でしかなかったのに。

「気に入った」

彼は、目を潤ませて見つめる私を見て、満足したように口角を上げた。

でも私は彼に気に入られるような人間じゃない。別にガツガツしてないわけじゃない、謙虚なわけじゃない。



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