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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体

それから彼は、私を指名してこの店に来るようになった。
一度や二度じゃない、何度も何度も私の元へやってきた。
週に1回の頻度。忙しい時も、少なくとも月に2回、私に会いにきてくれる。
彼の時だけは、私は素のままでいられる。自分の本性とは正反対のキャピキャピとした女の子の演技を必要としない。疲れなかった。
「今日の昼は何をしていたんだ?」
「お昼はいつも学校に行ってます」
「へえ……何を勉強してるんだ?」
「化学の勉強です」
「そうか」
彼は相変わらず欲望丸出しで私を求めることはせず、はじめはただの雑談からはじめる。
そのうち指を絡ませ、太ももをなぞって悪戯したり、チュッと小さく首筋に口づけたり。
「ふふっ、くすぐったい」
「お前からも、キスしてくれないか?」
「いいですよ?」
彼の首に腕を回し、チュッと唇に小さくキスを落とす。
「それじゃ足りない」
「んんっ……」
けれど満足してくれなくて、今度は自分から深く深くくちづける。
「舌、出して」
やがて舌を絡ませ、口内を探り、そうして少しずつ私の身体は熱を帯びていく。
本当の恋人のようだった。彼が客だとは思わなくなっていた。
たまに彼は、ただ雑談だけして帰っていく時があった。
かと思えば私の好きなチョコレートを持ってきたり、可愛いヘアアクセサリーをくれたり。ブランド物や、宝石のついた高価なものではない。ささやかなプレゼント。
彼はやっぱり変わった客だった。
でも、いつしか、無意識のうちに彼が来ることを楽しみにしていた。
彼が来ることを、待ちわびていた。

