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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体

***
朝、目を覚ますと、私は彼の腕の中にいた。
こんな朝ははじめてだ。あの頃は、彼と私に与えられた時間は1時間だったから。一緒に朝を迎えることはできなかった。
でも今は、目の前に彼のたくましい胸板がある。私は思わず手でその胸板に触れた。
「……起きたのか?」
「あ、はい、おはようございます……」
「おはよう」
彼は私より先に起きていたらしい。寝起きの掠れた声も色っぽくて、ドキドキした。
「今日、確か公休だったよな?」
「あ、はい……」
「そうか、じゃあゆっくりしておけばいい。俺も今日は夕方からの出勤だ。
シャワー浴びてくる」
「わかりました」
彼は布団をめくりベッドから降りる。
彼が寝ていたところのシーツは温かい。ほんのりとムスクの香りが鼻をくすぐった。
「シャワー、一緒に浴びるか?」
「い、いえ、別々でいいです……」
「そうか、じゃあ先に行かせてもらう」
彼がシャワールームに向かい、この広いベッドの上でひとりになると、なんだか、寂しくなる。
ただ彼がさっきまで隣にいたから。ただそれだけ。

