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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体


「現役時代にネットに載せられていたお前の写真を保存しておいた」

「そんな…今すぐ消してください!」

「消すわけないだろう。利用できるからな」

彼は意地悪に口角を上げた。

「俺の誘いを断ればこの写真がばらまかれる。嫌なら以後俺の言うことに従え」

「嫌に決まってます。でもそんなの強姦と一緒です!」

もはやただの脅しだ。彼に従うなんて、そんなのあり得ない。

そう、頭の中ではわかっているのに。ちゃんと理解できているのに……。


「本当は、嫌じゃないんだろう?」

彼は怪しく笑い、私の目の奥を覗き込んだ。

嫌なんかじゃない、身体が、心が彼を拒否しない。不都合だ、私の頭と矛盾してる。

彼が欲しい。もう一度彼に抱かれたい。

朝起きた時に、彼の腕の中で眠っていたい。

また彼に、求められたい……。


「交渉成立のようだな」

私は首を横に振らなかった。

かといって縦にも振らない、だって悔しい。

不服に思って彼から目を逸らした時、ちょうど私のマンションへとたどり着いた。

「じゃあな、また仕事で」

最後にチュッと、素早く唇を奪われる。

タクシーから降り、ドアが閉まると、私は見えなくなるまで見送り続けた。



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