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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体


「それに、店長にも手出して、樹くんにも手出すなんて、なんかズルくないですか?」

「店長?!」

その名を聞くと、背中に嫌な汗が流れる。ていうか、別にどっちにも手出してないし。私からは。

「金曜日、あれから店長とどこに行ったんですか?何してたんですか?」

「金曜日?」

ああ、そうだ。私、彼の口封じをするために飲み会の途中で抜け出したんだった。確かに飲み会の途中で男女が抜け出すのは怪しい。

「もしかして、店長とどこかでイチャイチャしてたんですか?」

彼とホテルに行って身体を重ねてしまったのは事実だけど、まああれは口止め料のためだし、本田さんが気にするような仲ではないんだけどな。

「別に、ただタクシーで家まで送ってもらっただけだよ。私酔ってたからほとんど記憶ないし。

あの時はほんとごめんね、今度から飲み過ぎないように気をつける」

私は適当にそれらしいことを言って誤魔化した。彼女といがみ合うようなことはしたくない。本田さんのことは仕事仲間として普通に好きだし。

「まあいいですけど。

抜け駆けは禁止ですよ?店長はみんなのものですから」

「いやいや、抜け駆けとかしないって。

ていうか店長が私に興味持つことなんてないから」

「んー、桃さんにっていうか、確かに店長はどこか一線を引いているような感じはありますよねー」

「そうなの?」

「なんか寄せ付けないっていうか、牽制してるっていうか。

彼女作ったり結婚したりするつもりはないんですかねー。まあそれはそれでヤキモチ妬かずに済むからいいですけど」

やっぱり彼はあの頃と変わらずひとりが好きなのだろうか。

彼女も妻も、作る気はないのだろうか。

そんなこと、考えたって仕方ないけど。




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