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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体


その日の夕方。

勤務を終えた私は、西岡駅から地下鉄で3駅ほど離れた北澤駅に来ていた。この駅周辺には店が多く、ショッピングには最適な街。

ゆるいスウェット生地のトップスにボーイフレンドデニム、そしてスニーカーにキャップ。すっかりオフモードだ。

元風俗嬢といえば派手な格好をイメージするだろうが、私はわりとボーイッシュでゆるい格好が好きなのだ。メイクだけは絶対に手を抜かないけど。特に赤リップはマスト。


ショッピングに来るのはだいたいいつもひとりだ。学生時代からひとりで出かけることは多い。

別に友達がいないわけではなかった。ただ気を遣うのは疲れるから。

マイペースに自分の好きなようにのんびりと過ごしたい。何もかも忘れて思いっきりリフレッシュするのだ。

その日はお気に入りのフレグランスショップでアロマを購入し、ランジェリーショップでルームウェアを購入。

前から行ってみたかったパスタ屋で早めの夕食を済ませ、自分が働いているのとは違うカフェでカフェモカを飲みながら本屋で買った雑誌を読んでのんびり過ごした。

好きなこと尽くしの充実した夕方を送る。

そしてすっかり暗くなった頃、家に帰ろうと駅へ戻ってきた。

すると、ちょっとした人だかりができていて、その中から、アコースティックギターの音と綺麗な歌声が聞こえてきた。

誰かがストリートライブをしているらしい。私の足は自然とその人だかりの方へ向かっていた。



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