この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体

人と人の隙間から中を確認しようとしても、くっついているからよく見えない。
仕方なく背伸びし、最終的にはジャンプ。
するとその先に、どこかで見たことのある顔が見えたような気がした。
いやいや、まさか……。
そう疑いつつも、私は再びジャンプする。
やっぱり、知っている顔。
嘘でしょ……。
私は見えた光景を疑いながらも、その人だかりの後ろでぼーっと突っ立って彼の歌声を聞き続ける。
繊細で、でもどこか力強くて、透き通るような綺麗な声。心を動かすようなメロディーライン。それを助長するアコースティックギターの音。
その歌い主は……さっきお店で会ったはずの、宮野くんだった。
十数分間のストリートライブが終わり、目の前にあった人だかりがばらけていく。おかげで彼の姿がよく見えた。やっぱりどう見ても宮野くんだ。
彼はアコースティックギターをケースにしまいながら、片手でスマホをいじっているところだった。
「……宮野くん?」
そんな彼に声をかけると
「ん?」
スマホをいじっている手を止め、パッと顔を上げる。
そして私の顔を察知した途端
「わ!!」
普段は見せないような驚いた顔をして声を上げた。
やば、声かけない方がよかったかな……。

