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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体


人と人の隙間から中を確認しようとしても、くっついているからよく見えない。

仕方なく背伸びし、最終的にはジャンプ。

するとその先に、どこかで見たことのある顔が見えたような気がした。

いやいや、まさか……。

そう疑いつつも、私は再びジャンプする。

やっぱり、知っている顔。

嘘でしょ……。

私は見えた光景を疑いながらも、その人だかりの後ろでぼーっと突っ立って彼の歌声を聞き続ける。

繊細で、でもどこか力強くて、透き通るような綺麗な声。心を動かすようなメロディーライン。それを助長するアコースティックギターの音。

その歌い主は……さっきお店で会ったはずの、宮野くんだった。



十数分間のストリートライブが終わり、目の前にあった人だかりがばらけていく。おかげで彼の姿がよく見えた。やっぱりどう見ても宮野くんだ。

彼はアコースティックギターをケースにしまいながら、片手でスマホをいじっているところだった。

「……宮野くん?」

そんな彼に声をかけると

「ん?」

スマホをいじっている手を止め、パッと顔を上げる。

そして私の顔を察知した途端

「わ!!」

普段は見せないような驚いた顔をして声を上げた。

やば、声かけない方がよかったかな……。




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