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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体

「びっくりした……」
「ご、ごめん、驚かせて」
「いや、別にいいっすけど……。歌、聞いてたんすか?」
「うん。地下鉄乗ろうとしてたら、人だかりができてて……誰が歌ってるんだろうって思って覗いてみたら宮野くんがいたから」
「ふーん……。まさか知り合いに歌聴かれるとは思ってなかった」
「嫌だった?」
「いえ、別に。聞かせるために歌ってるんで」
私は彼の前にしゃがみ込んで目線を合わせた。普段業者服を着ているところしか見ないから、私服を着ている彼が新鮮だ。そしてかっこいい。
「来宮さん、仕事帰り?」
「うん、そう。買い物してたの」
「ふーん……。私服、結構ラフなんすね」
「え?」
私は思わず自分の着ていたゆるいスウェットとボーイフレンドデニムを見た。
なんか、恥ずかしい……。ちゃんと可愛い服着てた方がよかったかな?いやいや、意味わかんないし。
「俺、そういう服着てる女の人、結構好きっす」
「へ……」
小さく笑う彼に、胸がトクンと高鳴ってしまう。
あーもう。また年下にドキドキさせられた。
彼は結構、無自覚で人をドキドキさせる人らしい。
「何買ったんすか?」
「アロマとか、ルームウェアとか、雑誌とか……まあ、いろいろ」
「大荷物っすね」
「まあこれから帰るだけだから」
そうは言ったものの、確かに今日は少し買いすぎた。

