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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

そんな私の過去を知っているのは、お店の人とその店の客だけ。
他に知られていいはずがなかった。たとえどんなに近しい人間でも教えられない過去。
そして、私の記憶からも一切消し去りたい過去。
今はその店を辞め、とある街のカフェで正社員として働いている。もう二度と身体を汚さまいと決め、真面目な職を探したのだ。
もちろんカフェは、ヘルスの店から離れている場所を選んだ。
近くだと店の人や客に出くわすかもしれない。非常に厄介だ。
けれど、この場所なら安心して働くことができる。きっと私の過去を知る人に会うことはないだろう。
ビクビクと怯えながら働くわけでもなく、新しく手に入れた仕事にただひたむきに取り組んでいた。
あの汚い過去とは決別する。いつか、私の脳内から綺麗さっぱり消え去るように。もう二度と、思い出せないように。
カフェで働きはじめてからの環境は平和だった。何ひとつ問題は起こらなかった。
私は幸せな日々を送っていた。きっとこれからもこの穏やかな日常が進む。そう、思っていた。
「今日から西岡駅前店の店長を務めることになった、音峰類です。よろしく」
この男に、再会するまでは。

