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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会


***


「制服は、エプロンのみこちらで貸与します。白シャツ、黒のスーツスカート、黒いくつをご自分で用意してください。

それから、給与については…」


小春日和の午後、チャイコフスキーのくるみ割り人形の音楽が流れるカフェの店内の奥のテーブルで、店長から契約内容や仕事についての説明を聞く。

ヘルスの店を辞めた約2週間後、私はこのカフェの面接を受け、無事正社員として採用されて働くことになったのだ。

全国に何十店舗もあるチェーン店。ちなみにここの店舗は西岡駅前店。その名の通り地下鉄西岡駅の出口から出たすぐ目の前にある店だ。

目の前で説明する店長は、優しそうな目をした口調の柔らかい、30代前半くらいの男性。風俗街にはあまりいなさそうな部類。おかげで私の中では好印象だ。


「来宮さんの方から、何か質問はありますか?」

「いえ、今のところ大丈夫です」

「わかりました。

それから、私事のような話ですが、実は来月から僕は他店舗の店長として働くことになります」

「え……そうなんですか?」

「はい。もちろん、この店に新しい店長が就任することになります。

短い間でしか一緒に働くことはできませんが、よろしくお願いします。一緒に頑張りましょう」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

この好印象の店長と少しの間しか働けないのは確かに残念だ。でも、無事に職を手に入れられてよかった。



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