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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体

「ねえ、宮野くんはよくここで歌ってるの?」
「まあ、そうっすね。俺、シンガーソングライター目指してるんで」
「シンガーソングライター?」
「昔、ここでギター弾きながら歌ってる人がいて……その人に、俺は勇気づけられて。だから憧れてるんすよ。
その人はもうメジャーデビューしたから、もうここで歌うことはないっすけど」
「へえ……。じゃあ宮野くんも、メジャーデビューを目指してここで歌ってるの?」
「うん。その人にもう一度会いたいから。その人が俺を勇気づけてくれたように、俺も誰かを勇気づけたいから」
そう夢を語る彼の顔は、生き生きしていて、輝いていて……。
私が18歳だった頃とは大違い。風俗の仕事で身体を汚していた私なんかとは全然違う。
夢なんて、小学生の頃にアイドルになりたいって思ったくらいだ。実際に目指したことのある夢なんてない。
だからこそ彼は眩しい。かっこいい。
「宮野くんのこと、応援してる。また聞きに来てもいい?」
「え……バカにしないんすか?」
「え?」
「この歳になって、まだ芸能界目指してるのかとか、思わないんすか?」
彼は不安げな表情で目をそらす。なんで、そんなこと言うの?バカにされるようなことじゃないのに……。

