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たとえそこに、愛がなくとも
第3章 理不尽な嫉妬

そわそわしながらたまにドアの方にチラチラと目をやっていると
「おざーす」
ついに、彼がやってきた。
「おはよう」
「お、おはよう」
店長の後に習って、彼に挨拶する。
「……うっす」
けれど彼は、いつも通り。なんら変わりない。
私が声をかけると、少し間があって、そのあと「うっす」って答えるところ、いつもの彼そのものだ。
もしかして、意識してたの私だけ?変に身構えてたの私だけ?
なんでそんな平常心でいられるの?18歳のくせに。年下のくせに。生意気な……。
ムッとしながら彼の方を見ていると、その視線に彼が気づく。
「あ、昨日の夜は、どうも」
彼は無表情でそう言った。いや、どうもって、そんな軽々しく言ってのけること?
「こ、こちらこそどうも……」
どう答えていいかわからず、とりあえず同じようにどうもと返す。
「なんか今日、顔色悪いっすね」
いや……それ宮野くんのせいです。宮野くんの告白のせいで寝れなかったんです、とはもちろん言えず。
「……別に、そんなことないけど」
私は彼からスッと目をそらした。
「嘘はダメっすよ。
無理しないで、ほどほどに頑張れば?」
「はぁ……」
そうは言われても、仕事をそう簡単に投げ出すにはいかない。
けれど、彼とのあまりにも気の抜けた会話で少しだけメンタルが回復した。
そんなに重く捉える必要はないらしい。いつも通りでよかったらしい。
そう思うと、彼の「頑張れば?」という投げやりすぎる言葉がなんだか可笑しくなってくる。

