この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
たとえそこに、愛がなくとも
第3章 理不尽な嫉妬

「ふふっ」
「……何笑ってんすか?」
「ううん、ただの思い出し笑い」
「思い出し笑いはヘンタイの証拠っすよ」
「え、うそ?!」
「来宮さん、ヘンタイだったんすね」
「いや、そんなわけ……」
「じゃあ、また明日」
「ちょ、宮野くん!!」
彼はいつものように、会話の途中で「じゃあ」と言って、私をほったらかしにしたまま事務所を出て行ってしまう。
また振り回された……。
でも、変に関係こじれたりしなくてよかった。
「ふぅ」と安堵のため息をつき、背もたれに体重を預けると、今度は、別の方向から視線を感じた。
その方向に目をやると、頬杖をつきながらこちらを凝視する彼の姿が。
「おい」
「な、なんですか」
怖い怖いと思いながらも彼に返答すると、彼は椅子からスッと立ち上がった。
そして私のパイプ椅子の背もたれに手をかけ、突然私に顔を近づける。
「ち、近いです。いきなりなんなんですか、さっさと離れてください」
「昨日の夜ってなんだ」
「え……」
「昨日の夜、さっきの業者と会ったのか?」
「あー、えっと、まあ、はい……街で偶然……」
というのは別に嘘じゃない。その先のことは言いたくないけれど。
「ふーん……街で偶然、ね」
けれど彼は納得していないようで、さらに不機嫌そうな声で私に詰め寄る。
「お前、前々から思っていたが、少しあの業者と仲が良すぎないか?」
「別に、普通です。仕事仲間として、雑談くらいするでしょう?」
「けど、俺には普通に見えない」
すると彼は、私の顎をクイっと持ち上げ、突然私の唇を彼のそれで塞いだ。

