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たとえそこに、愛がなくとも
第3章 理不尽な嫉妬


「ふふっ」

「……何笑ってんすか?」

「ううん、ただの思い出し笑い」

「思い出し笑いはヘンタイの証拠っすよ」

「え、うそ?!」

「来宮さん、ヘンタイだったんすね」

「いや、そんなわけ……」

「じゃあ、また明日」

「ちょ、宮野くん!!」

彼はいつものように、会話の途中で「じゃあ」と言って、私をほったらかしにしたまま事務所を出て行ってしまう。

また振り回された……。

でも、変に関係こじれたりしなくてよかった。


「ふぅ」と安堵のため息をつき、背もたれに体重を預けると、今度は、別の方向から視線を感じた。

その方向に目をやると、頬杖をつきながらこちらを凝視する彼の姿が。

「おい」

「な、なんですか」

怖い怖いと思いながらも彼に返答すると、彼は椅子からスッと立ち上がった。

そして私のパイプ椅子の背もたれに手をかけ、突然私に顔を近づける。

「ち、近いです。いきなりなんなんですか、さっさと離れてください」

「昨日の夜ってなんだ」

「え……」

「昨日の夜、さっきの業者と会ったのか?」

「あー、えっと、まあ、はい……街で偶然……」

というのは別に嘘じゃない。その先のことは言いたくないけれど。


「ふーん……街で偶然、ね」

けれど彼は納得していないようで、さらに不機嫌そうな声で私に詰め寄る。

「お前、前々から思っていたが、少しあの業者と仲が良すぎないか?」

「別に、普通です。仕事仲間として、雑談くらいするでしょう?」

「けど、俺には普通に見えない」

すると彼は、私の顎をクイっと持ち上げ、突然私の唇を彼のそれで塞いだ。


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