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たとえそこに、愛がなくとも
第3章 理不尽な嫉妬


そしてその日の夕方、店長と私は上がりの時間が同じで、彼はパイプ椅子に座って私が着替え終わるのを待っていた。もちろん、私をホテルに連行するために。

更衣室にいると、先ほどのことを思い出して、つい心拍数を上げてしまう。

本当になんていうことをしてしまったんだろう。流されたとはいえ、職場で……。やだやだ。

私は嫌な記憶を払拭しようとフルフルと首を横に振った。すると、外から彼の不機嫌そうな声が聞こえてくる。

「おい、来宮。まだ着替え終わらないのか」

「あ、はい。すいません、急ぎます……」

って、誰のせいで時間がかかってると思ってるんだ。

心の中でブツブツと文句を言いながら、私は慌ててスカートのホックをしめて靴を履き替えた。


「お待たせしました」

「たかが着替えるくらいでどれだけ時間をかけてるんだ」

「だから、すみませんって……」

イラっとしながら彼に投げやりに謝ると、彼は私の目の前に立ち、腰を抱き寄せて唇を耳元に寄せた。

「まさかお前、昼間のことを思い出してひとりでしてたのか?」

心臓をきゅっと締め付けるような彼の甘い重低音。

「は、離れてください。そんなことしてません。あと普通に言ってください……」

「だってお前、耳、弱いだろう?」

そう言って彼は、真っ赤になった私の耳をカプッと甘噛みする。

弱いって知っててわざとやってるなんて、ほんと性格悪い……。


「ほら、行くぞ。早く抱かせろよ」

彼はポケットに手を入れ、取り出した車のキーを私に見せる。

「乗せてやる」

「……どうも」

彼が裏口のドアに向かって歩き出すのを、斜め一歩後ろから追いかけた。



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