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たとえそこに、愛がなくとも
第4章 両サイドからの誘惑

「まああの子たちがイケメン好きのミーハーだから、仕方ないことなんだけど。あなたは何も悪くないから気にしないで。
それに、相談に乗ってほしいならいつでも聞くわ」
「桐沢さん……」
彼女のあまりに優しい言葉が、心身共に疲れている私の身にしみる。
「あまり溜め込まないようにね。
じゃあ私、仕事に出るから」
「はい、ありがとうございます」
「いいえ」
エプロンの紐を締め、前髪を整えながら事務所のドアを出ていく。
そんなかっこよすぎる彼女の背中をつい目で追ってしまっていた。
すると、その視界に、他の人物の姿が入ってくる。
「おざーす」
彼女と入れ替わりに入ってきたのは、宮野くんだった。
「あ、えと……お疲れ様」
「……うっす」
先ほどまで話題になっていた張本人が現れ、なんとなく気まずく感じてしまう。
「あの」
「な、なんでしょう」
「来宮さんと店長って、どういう関係なんすか?」
「えっ?!」
な、なんでいきなりそんなことを……。
「すいません、さっきの話聞いてました。そこのドア、空いてたんで」
そう言って彼は事務所のドアを指差す。
そういえばさっき、ドア開けっ放しにしてたかも。しまった……。
「昨日、店長の車に乗ったって。なんで?」
「それは、その……ただ、仕事仲間として一緒にご飯食べただけだから」
「ふーん……」
けれど彼は、疑うような目で私を見つめる。
「な、なに?」
「俺とも一緒にご飯食べてよ」
「……え?」
「俺、今から昼休憩だから。トラックの中で一緒に飯とか、どうっすか?」
「えっと……」
どう断ろうかと思考を働かせたが、よく考えれば別に断る理由はない。
「……じゃあ、お供させていただきます」
「ふっ、なんすかそれ」
そう言ってクスッと笑う彼。
あ、こうやって笑うとこ、初めて見たかも……。
そんな彼のはじめての表情に、なぜだかキュンと胸が高鳴ってしまった。

