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たとえそこに、愛がなくとも
第4章 両サイドからの誘惑

それから彼とコンビニで適当にパンを買い、トラックの助手席に乗せてもらう。
「トラックって、こんなに目線高いんだね」
「俺はいつもトラックばっか運転するから、普通の車に乗った時低く感じるんすよ」
「へえ……高校卒業してからずっとこの仕事してるの?」
「はい。いつかは、音楽で食っていけるようになるといいんすけどね」
「大丈夫。宮野くんならなれるよ。
だって綺麗な声してた。それにメロディーラインも好きだし、なんていうかこう、心が動くっていうか。この前声が聞こえてきた時、自然と足が引き寄せられたもん」
思っていたことを素直に話すが、なぜだか、彼から返答がこない。
私なにか変なこと言っちゃったかな?
「あの、宮野くん……」
少し焦りながら彼の方を見ると、なぜだか彼は耳まで真っ赤にしていて。
「……今こっち見ないで」
「わわっ」
彼は手のひらで私の目を覆った。
「あの、えっと……」
「あんたがこっぱずかしいこと言ってくるから」
なるほど、彼は照れているらしい。
うそ、可愛すぎる……。
普段滅多に表情筋なんて動かさないくせに。
「……けど、嬉しい。ありがと」
「私は思ったこと言っただけだよ」
「……あんたって、ズルイっすよね」
「へ?」
「別に、なんでもないっす。
ただ、やっぱ来宮さんのこと好きだなって」
「……っ!」
不意打ちで再び好意を口にされ、今度は私が赤面してしまう。
もう、さっきまで照れてたくせに……。

