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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会


しばらく仕事をしたのち、私は30分の休憩をもらった。

店の奥にある事務所に向かい、中にあるパイプ椅子に腰を下ろす。


事務所には、テーブルとパイプ椅子4つ、パソコン、荷物を置く棚、そして制服に着替えるための鍵付きの更衣室がある。

休憩時間が被った人はおらず、事務所にはひとりだった。

家から持ってきたペットボトルのレモンティーをテーブルに置き、背もたれに背中を預けながらたまにレモンティーに口をつける。

そして、昨日店長に渡されたカフェのマニュアル本をパラパラとめくった。


たまたま見たページには、ドリンクの作り方が書かれていて

『ブレンドコーヒーは淵から2センチ、カフェオーレは淵から3.3センチ、ミルクを1.7センチ』

とにかく、細かった。

嘘でしょ、こんなの覚えるの?ていうかみんなこんなの覚えてるの?すごいな…。

風俗の仕事は、マニュアルはあるものの、ほとんどは自由に任されていて、私もほとんど適当にやっていた。

って、もうあの仕事のことは忘れなきゃ。思い出したくもない。

私は記憶を払拭しようと首をフルフルと横に振った。

すると

ーーコンコン

事務所のドアが、急にノックされた。

あまりに突然で、ひとりで驚いてビクッと肩をあげてしまう。



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