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スーパーヒーロー
第2章 アンリ
コンコンコン
ガチャ・・・
「すみません・・・カーチス先生はいますか?」
「やっときたか~!!!君は授業をろくに聞かないだけでなく、遅刻も多いようだね?」
「・・・すみません」
「これを取りに来たんだろう」
そう言って先生は机の引出しから僕のスケッチブックを取りだす。
目の前の机に乱暴に置かれたスケッチブック。
僕はすぐに取った。
「・・・じゃあ、これで失礼します」
「ちょっと待ちなさい」
「・・・」
急いで部屋を出ようとしたのに寸前で呼び止められた。
何を言われるか分からないぞ。
「なんでしょう・・・」
「君・・・いい加減に夢を見るのはやめてはどうかね?」
「夢・・・」
「そう、それ見たよ。いい年した男子が空想の世界にどっぷりハマるなんて、
恥ずかしくはないのかな?」
「っ・・・僕は」
「いい加減に前を見なさい。子供じゃないんだから・・・。そんなだから、周りの生徒たちに馬鹿にされるんだよ」
「・・・っ・・・」
僕は、僕の夢を、純粋に見ているだけだった。
周りに何を言われても、どう思われても構わない。
だってそれが僕の選んだ道だし、僕の好きなことなんだ。
馬鹿にされたっていい。だって僕には、僕のヒーローがついているから。
「君にヒーローなんていない」
「・・・え」
「君は一人だ」
「・・・」
「分かったら、とっとと帰りたまえ」
「・・・」
僕は一人・・・。
僕にはいつも、スーパーヒーローがついてると思っていた。
僕のスーパーヒーロー、グリーンベースが。
だって僕には、僕には彼しかいないんだ。
そんな彼がいないなんて、否定なんかされたら・・・僕は一人だ。
僕はただ、空想にすがっていただけ。
本当のヒーローなんていない。
とてつもなく自分がみじめに思えてきたよ。
あ・・・どうしよう、こんなことはじめてだ。
こんなにも自分の何かを否定されて苦しいのは。
それは、僕がグリーンベースを必要としていたからでもあり。
心から愛していたからでもあるのかもしれない。
どうしよう・・・
無性に・・・
目から涙が零れてくる・・・
胸に大切な宝物でもあるスケッチブックを抱え、
とてつもなく重い足取りで一人、廊下を進んでいく。
胸元のスケッチブックには、涙が何滴も零れた。