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スーパーヒーロー
第2章 アンリ
「うっ・・・くっ・・・っ・・・」
あー、だめだ、おさまりそうもないや。
ちゃんと帰れるかな。
なんか、家にもあまり帰りたくない気分だ。
完全に自分を見失ってしまったような、そんな感じ。
自分じゃないみたい。肉体が勝手に動いているみたい。
とにかく体が重い。
心と体って、こんなにも繋がっていたとは・・・。
ガチャ・・・
自分のロッカーを開ける。
中には、置いておいたコミックが教科書と一緒にたくさん入っている。
「っ・・・くっ・・・うぅ・・・」
まだ涙はおさまらない。
僕ってこんなに泣き虫だったんだな。
今まで辛いことはたくさんあったけど、ほとんど、気持ち的には
グリーンベースに助けられていた。
だから、こんな時にどうしていいかなんて分からない。
ただ湧き出てくるような涙を抑えることくらいしかできないでいる。
コツ、コツ、コツ・・・
すると、静まり返った誰もいないはずの廊下から足音が聞こえてきた。
「・・・っ・・・ひっ・・・だ、だれ・・・うわあっ!!」
バサバサバサバサ!!!ドサドサ!!
足音の聞こえてくる方へ振り向いた瞬間に、
開いていたロッカーから大量の教科書とコミックが僕めがけて降ってきた。
「・・・いっ、いったー・・・っ」
ああ、なんて惨めなんだ。
そう思うと、涙は出てくるばかりだ。
「ううっ・・・なんれっ・・・もう・・・っ・・・」
「おいおい、大丈夫かよー。泣いてんの??」
するとものすごい近くから声が聞こえてきた。
僕に話しかけているのか・・・。
しかもどこかで聞いたような声だ。
・・・。
「うぇ?・・・」
僕は地面に膝をついたまま上を見上げた。
黒いスニーカー、バンドTシャツ、手首にはイニシャル入りのブレスレット。
見なくてもすぐに分かった。
そこにいるのは紛れもなく僕の・・・僕のヒーローだ。
「男が泣くなよー、ホラ、手伝ってやるから」
「・・・っ・・・ぐ、ぐっ・・・ぐぅ・・・」
「え?なんだって?」
「・・・くっ、ぐ~・・・ぐりぃんべぇすぅ~・・・!!!」
この瞬間、僕の涙腺は限界を超えたのだった。
自分でも何を言っているのかは分からなかった。
が、目の前にあるのは現実。
僕は、少しは救われたのかもしれない。
目はぐちゃぐちゃであんまり見えないけど、僕の目にはもう彼しか映っていない。