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スーパーヒーロー
第2章 アンリ
「ホラ、これでよし・・・大丈夫?」
夢みたいだ。心臓が苦しい。いろいろ混ざって苦しい。
嬉しいけど、涙は止まらない。
「うっ、うん・・・あ、ありがと・・・っ・・・」
「というか・・・なんで泣いてんの??」
言うまでもないけど、今僕の目の前にいて僕に話しかけてくれてる人は、
今日学校に転校してきたアンリ・ケイントだ。
僕の・・・、憧れ?の人なのかな。
いろんなことがいっぺんに起きるもんだから、彼に抱いている感情が
どんなものなのかは分からなくなってしまった。
もとい、僕はあまりそういうことは分からない方の人間である。
「っ・・・いや・・・その・・・うぅっ」
「んー・・・そうだ!一旦落ち着こう!な」
「ひぐっ・・・ごべんっ・・・」
「大丈夫だよ、えっと・・・もうすぐここ閉められちゃいそうだから、外歩くか」
そう言って彼は僕の手を引いてくれた。
暖かい。夢に見たのと同じような感覚だ。
放課後。
僕はまるで宙に浮いているかのような気持で歩いている。
そう・・・彼と。
僕の募るようなこの女々しい気持ちは何なんだろう。
自分でそんな感情が生まれているということは分かるが、
その感情がどんなものなのか、正体は全く分からない。
でも、とても暖かいような。
彼といると、彼がそばにいてくれると、とても安心する。
まさに今がそうだ。
「あの先生にそんなこと言われたのかー」
「・・・っ、うん・・・」
男としてみっともないことは痛いほど分かっている。
が、涙はいまだに止まっていない。
「最初見たとき、性格悪そうな先生かなとは思っていたけど・・・だってあれだぜ?校長にだけは媚び売っているような態度を見せてた」
彼はそう言ってカーチス先生の真似をしてみせる。
「ふふっ・・・」
とても似ているとは言えないが、彼なりに先生の真似を大げさにふざけてやっているようで、僕は思わず笑ってしまった。
「あ、笑ったな」
「っ・・・い、いや、その・・・」
「いいんだよー!笑ってた方が。な?」
「・・・うん・・・」
歩きながら、彼は僕の話を全部聞いてくれた。
泣いててあまり上手く話せなかったけど、彼は一生懸命耳を傾けてくれた。
僕はそれが何よりも、嬉しくて嬉しくて、たまらなかった。