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花屋のあの人
第1章 ⒈始まりと出会い
暗めの色のジーンズに白いTシャツに黒いジャケットの
無難な格好へと着替えた斎は玄関へと向かい靴を履く。
ドアノブへと手をかけ回せばガチャリと音たて扉が開いた。
その瞬間に春の暖かい風が部屋へと流れ込む。
そんな風を一気に吸い込み吐いた。

「よし、行ってきます」

新居へ声をかければ外へと足踏み出し扉を閉め鍵をかける。
一歩足を踏み出す度に心を期待が満たしていく。
知らない街並み 知らないお店。
お洒落なカフェを見つけ今度行ってみようと思ったり、
雑貨の並ぶショーウィンドウにまるで女性のように張り付いたり。
まるでテーマパークにきた子供のように斎ははしゃいだ。

「やっぱり、ここに来てよかった」

そんなことを春の日差しが眩しい空へと呟き、再び歩を進める。
もう少し奥へ行ってみようと思ったその時、

「ありがとうございました またいらしてくださいね」

と柔らかい少し低めの声が耳に届く。
斎はその声の主を探すように周りを見渡し、見つけた。
高い背に柔らかそうな黒髪 エプロンをした彼は 花束を抱えた女性と楽しげに話している。
店先に並ぶ色とりどりの花から 花屋なんだとわかる。

耳に届いた声 楽しげな笑顔 飾らない彼に斎は惹かれていた。
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