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あいの向こう側
第9章 blue
翌日、
いつものように社内食堂にて昼食をとる。

『はー?
そうなのー?
……良いなぁ……』

パウチゼリーを吸い込みながらサリが言う。


『良くないわよー。
ビックリしちゃって、
そう言われてもピンと来ないし』


『和楽ロールも実はそのコが買って来てたりして。

ずるーい!
あたしも愛されたーい』


サリはテーブルにバタッと倒れるジェスチャーをした。


『………アンタ経理の係長とどうなの?』


『………嫁と娘を引き合いに出されちゃ敵わん……………』

突っ伏したままそう呟いているが、
私は右手の薬指に光っているシルバーリングに気付いた。

『その指輪は何だろね〜〜〜〜〜』


サリは『あ。
しまった(苦笑)
こないだ一緒に行って買ってくれたのー♪♪』
と顔を上げてニコニコ笑い始めた。
『いーじゃん、
年とか関係なくさぁ。
それに…
あたしらのあの飲み方知ってて寄ってくるなら、それはよっぽど信憑性高いわ。飲んでる時はオッサンだもん、あたしら』


『確かに………』


私は居酒屋で大口を開けてバカ笑いをしている自分を思い浮かべて、
妙に納得した。


『―あ。
あの人、婚約したらしいよ?契約社員のコと』
サリが突然社員を指差した。

見ると、田方だった。


(あ…………
だから昨日呼び止めたのね)


―――婚約したから、気にしないで――――


そう言いたかったのだなと気付く。

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