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あいの向こう側
第20章 影
ロングTシャツにショートパンツ姿の女の子が俺を見ている。
黒髪をツインテールにきっちり結んでいた。



『だ、だれっ?!』
スマホを隠す俺。



『誰でもないよ!
ねー、今のもっかい見せてよぉ。
わたしガラケーだから動画見れないんだ~』

妙になれなれしい。


近所の子じゃない。


ド田舎だから、
周りは皆知人だ。




スラリと細く、
あどけない一重まぶた。


『中学生?
小学生?
………………ちっ』
俺は小さく舌打ちをし、
立ち上がる。



せっかく癒されようと思ったのに。



『あー!どこ行くの?
待ってよぉ』


女の子は追ってきた…………………



俺は振り返ると、
『どこの子だよ?
お兄さんは忙しいんだよ』
とキツく言う。



大人げないなぁと自嘲しながら。


『どこの子って、
ここの子だよ!
ねーねー、
失恋したなら暇でしょ?
わたしと話してよ~』




俺はピタリと足を止める。

『……………………何で知ってんだよ』
誰か吹聴して回ったなと訝った。



俺が呟くと、
ツインテールは「引っかかった~~~♪♪♪
カマかけたの♪」とぴょんぴょん跳ねる。




『…………………………そうですか……………』
中学生か小学生にカマをかけられ、
うっかり吐露した俺って一体……………

撃沈し、
とぼとぼ歩いた。
背中を丸めて。




『怒った?
ごめんなさい………』
ツインテールは後をテクテクついてくる。





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