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あいの向こう側
第21章 ぬれたま
うるさいのは苦手だ。


高校は進学校で、
1年の1学期から大学の話が出ている。
6月、期末考査前だから尚更挙がるクラスメイトたちの迷いと希望。


俺は志望大学があって、
そこに入るにはこの高校が近道だから入学した。



母子家庭だから母を支えたいとか?

そんな殊勝なことじゃない。

早く自分で稼ぎたかった。



スマホ画面をスクロールした。
英単語帳を出して、
暗記した語彙を復習してゆく。



_____プシュ~~~……



バスが停車する。



俯き気味で英単語に熱中してた俺は、
足元に黄色いスニーカーが現れて顔を上げた。


『_____ぅわ』

マズい。
変な声が出た。



目の前に、
他校の女子が立てっていた。


いつも4つ先までは俺一人だけ(たまに爺さんがちらほら)のバス内。



見かけないなぁと思った。

だけど………………



『あのー…………使う?タオル』
俺はリュックサックからハンドタオルを取り出した。差し出す。



女子は、文字通りずぶ濡れだった。


髪やシャツ、チェックのスカートからボタボタ落ちる雨粒。


着衣のまんまシャワーでも浴びたみたいだ。



女子が無言で頷き、
ハンドタオルを受け取る。


ムッとした。


ありがとうくらいないのか?


女子はハンドタオルで顔を拭くと、
被さっていた前髪を上げた。


『うわ!』

『…………え…………なに?
あ、すみません。というかどうもありがとう』


_____何だよこのコ。


ずぶ濡れの髪で隠れてて分からなかった。

すんごい美女だ。



うちの学校にも可愛い子は沢山いる。

だがしかし。


クッキリした二重まぶたに、
小さな形のよい鼻。
真っ白な肌に赤い唇がキュッと結んでて………


まじまじと見てしまった。



(うわ、ラッキー。
天然じゃんこれ…………)




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