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あいの向こう側
第22章 悲しい夜
年甲斐もなくワクワクする。


病気というのは、否応なしに人を幼稚にしてしまうのかなと思う。



灯りが点いた部屋に人影が見えた。

ホッとする。


_____5日前からだ。

癌と言われてもピンと来ないまま、
慌ただしく入院したのが先月末。

膵臓癌なのだが、一番表面化し辛いぶん本人も自覚が少ない。


至る所に転移していると難しい顔をした医者に言われ、
他人事のように『はあ、そうですか』と返事をした。




故郷の母親が叔母に付き添われはるばる来院し、
僕にしがみついて号泣した。

父は僕が幼稚園の頃に工事現場で作業中に亡くなったし、
兄一家は海外赴任している。


白髪に紫のメッシュを入れた母。

泣くのを初めて見た。





『____お』
人影が髪を解いたらしく、
背中がふわりと膨らむ。


夜で窓越しだから見えないのだが、
5日前に気づいてから毎日こうやって夜7時過ぎから待っているのだ。




ホスピタルの向かいにある喫茶店には入ったことがない。

入院患者が言うには「バツイチの32歳の女性が継いでいる」らしい。



バツイチも32歳も、どこから仕入れてきたんだか。



その時は『へぇ』くらいだったが、
こうして夜に窓に映る影を見つけてから少年のように楽しみになった。




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