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あいの向こう側
第22章 悲しい夜
嫁は目尻を拭うと僕の洗濯物を抱えて『これだけかしら?要る物はない?』
とベッド周りを見渡す。



僕がないと言うと『じゃあまた来るわね』と仕事に戻っていった。



______髪が抜けたよ。

分かってるよ。自分が一番死に近いのだから。



嫁は花屋の雇われ店主をしている。
パート勤務から抜擢され、
__元々向いていたのだろう__2店舗を受け持つ。




仕事をしていたほうが気が紛れるのだ。


僕は、兄からの手紙を引き出しに仕舞った。


読むときっと泣いてしまう。
そして、自分の意識が〔死〕に引っ張られてしまう。















夕飯を終え、
僕はまた窓際に向かった。


7時25分。


窓際に立つと同時に喫茶店の裏手の部屋に灯りが点いた。



人影が忙しなく動く。


髪をほどいたらしく、
背中がふんわりした。


空気が乾いてきたからだろうか?
最近、よく見えるようになった。




人影は___いつもは窓際で動かないことが多いのに____、
いやにウロウロしている。


僕はジッと見た。


向こうからは分かるはずもない。


こちらはホスピタル内の高い位置だ。




_____人影が、
増えた。


『あっ?』
思わず声が出た。


この何週間か毎日見ているが、
人影はいつも女性らしきものが一体だけ。




窓に額を付けて見てしまう。




女性らしき人影は、
ウロウロしたあともう1人にくっついた。

そして、おそらく……………

ベッドにもつれ込んだ。






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