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あいの向こう側
第22章 悲しい夜
『ははあ…………彼氏かな』


32歳と言っていた。


人影が店主なら、
恋人がいても何ら不思議じゃない。



家屋の狭い窓に動き回る二つの影が映る。


灯りが点いたままだ。


重なって転がり、
もつれ合うのが見えた。



僕は年甲斐もなく息を荒げた。

嫁とは何年もご無沙汰である。
互いに淡白だからか、スキンシップも少なくて不満がない。




食い入る様に見つめた。


小さな四角い枠で、
折り重なる二つの影。



『あっ!』

女性のだろう。

脚が片方だけ高く上がった。





(……………ダメだ…………)
僕は車いすを畳み、
引きながらトイレに向かう。


個室に入って根を取り出し、
思い切り握って上下に動かした。



『…………はあ、あっ……………くっ!』
情けない声とともに白濁液が飛ぶ。

急いでティッシュをカラカラ巻き取り、
先っぽにあてた。


腰から力が抜けてゆく。





目尻が痛いと思ったら、
涙がポロリと流れた。


へなへなと床に座り込む。

根をダランと出したままで。




僕は顔に掌をあて、
声をころして泣いた。



_____体はまだ、こんな些細な刺激で動くのに。
中学生のように、
扱き出してしまうのに。


抜け落ちる髪。

苦しげな嫁の笑い顔。







看護師から「大丈夫ですかー?消灯しますよ~」とノックされるまで、
僕は泣き続けた。




病室に戻ったら兄からの手紙を読もうと決めて、
ドアを開けた。

























〔終わり〕













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