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あいの向こう側
第23章 か・わ・い・そ・う
実雪【みゆき】は急いでパンツスーツに着替えた。
夕方、小降りの雨で辺りは既に薄暗い。
駅のトイレ。
髪を高い位置でひとつに結び、
深紅のグロスを塗る。
濃いアイメイクをし黒ぶちのダテ眼鏡をかけ、
いつもほぼ無人の駅トイレの洗面に向かう。
グレーのかっちりしたスーツは、
実雪の年齢を七つは上に魅せてくれる。
背筋を伸ばし、踵をコツコツ鳴らしてトイレを出た。
セーラー服をぐしゃぐしゃに押し込んだトートバッグと、
学校指定のディパックをコインロッカーに仕舞う。
____寒い。
スーツだけじゃ身震いする冬。
しかしダサいダウンコートなど着てゆくわけにいかないのだ。
携帯を取り出し、
オーナーにtellをする。
『サナです。今から向かいます』
「分かりました。
頑張ってね」抑揚のないオーナーの声。
一度会ったきりだけど、
何故こんな仕事をしているのか不思議なくらい上品で美しい女性だった。
傘を差し、タクシー乗り場に向かう。
空車に飛び込むように乗り、
『Nホテルへ』と告げた。
タクシーはゆっくりと走り出す。
実雪は、
既にサナになっていた………………
夕方、小降りの雨で辺りは既に薄暗い。
駅のトイレ。
髪を高い位置でひとつに結び、
深紅のグロスを塗る。
濃いアイメイクをし黒ぶちのダテ眼鏡をかけ、
いつもほぼ無人の駅トイレの洗面に向かう。
グレーのかっちりしたスーツは、
実雪の年齢を七つは上に魅せてくれる。
背筋を伸ばし、踵をコツコツ鳴らしてトイレを出た。
セーラー服をぐしゃぐしゃに押し込んだトートバッグと、
学校指定のディパックをコインロッカーに仕舞う。
____寒い。
スーツだけじゃ身震いする冬。
しかしダサいダウンコートなど着てゆくわけにいかないのだ。
携帯を取り出し、
オーナーにtellをする。
『サナです。今から向かいます』
「分かりました。
頑張ってね」抑揚のないオーナーの声。
一度会ったきりだけど、
何故こんな仕事をしているのか不思議なくらい上品で美しい女性だった。
傘を差し、タクシー乗り場に向かう。
空車に飛び込むように乗り、
『Nホテルへ』と告げた。
タクシーはゆっくりと走り出す。
実雪は、
既にサナになっていた………………