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あいの向こう側
第23章 か・わ・い・そ・う
_____『ああっ、お許しを!!』

40がらみの男はブリーフ一枚で仰向けになり、
弛んだ腹を揺らして涙ぐむ。



『こんなに膨らませて…………、
許してほしいなら舐めなさい!!
ほら!!』

サナはパンツスーツから出た裸足の指先を、
男の唇に押し付けた。


『は…………はひ…………』

はぁはぁと豚のように鼻息を荒くして、
男はサナの足の指を舐めた。




ぞわりと走る嫌悪。


一瞬だ。


仕方ない。

仕方ないのよ。

(仕方ないから、実雪、お願いね__)

ママの声が被さって脳裏に響く。


ママは難病のジストニアだ。

麻痺が酷く、
自宅にいるけれど家事すら覚束ない。


ポータブルトイレの汚物を捨てながら、
実雪にそう言った。


幸いというのかな。
父親は元もといないし、
実雪にきょうだいもない。



ママとふたりきり。




学校帰り、
登録してあるデートクラブで稼ぐ。


夕方にも関わらず中年のサラリーマン客が殺到する。


自分の学費と、
生活費に進学費用。


実雪は進学したかった。医療の専門学校に行き、
ケースワーカーになりたいという夢がある。



ママが発症するまで貯めてたお金は、
何度かの手術で消えていった。




ネット検察でデートクラブを探し、
登録した。


(オーナーが女性のところなら、
そんなに酷い内容は無いんじゃないかな……)




そう考えて今のデートクラブを選んだ。


S系の女子に虐められたいという男をターゲットにした、
デリバリー体系のデートクラブ。



大概サナを指名してくるのは40~50代のおっさんだ。





最後までしなければいい。

虐められたいおっさんたちは、
ホテルの密室だからといってサナをいたぶったりはしない。







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