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あいの向こう側
第25章 すきまかぜ
ビシッ、パシーン!!!


痩せた男の肌に赤い筋が入る。


『このっ、クソ豚がぁ!』

私は憤りを込めて踵で踏みつけた。

腹だけ出っ張った、醜い男を。





『あひっ!ひぃぃ………
もっと………、もっといたぶって下さいませぇ』

男は泣きそうな声で求める。

私はイラつき、
大きく振り上げたムチを力一杯下ろした。


バシィッ……………


『あーーーーー!!!』
トランク一丁の客は、
尻を半分出して蹲る。

歓喜の叫び。


『女王様ぁ…………お許しくださいっ…………』


『許さないわ。
私が良いと言うまで、打たれてなさいっ』


私はムチを振り下ろす。



____快感。
ああっ、あん…………!
はぁ、はぁ……………


出そうな喘ぎを抑える。



男をいたぶることに、快感を感じるなんて半年前に初めて知った。


総務の女と、
旦那のLINEを見てから一ヶ月後だった。


まるで蜜月の恋人同士のようなやり取り。


私にはそんな言葉など使われたこともない。




憤りはその時だけだ。



『はぁ、はぁん…………』
客は仰向けになる。

半分ずり落ちたトランクスから、
根が飛び出していた。



私はカツカツ踵を鳴らし近寄り、
男へと屈む。



両手で包むように根を持つ。



男は『ハフン…………』と愉悦を漏らした。

目がうっとりと私を見る。





_____私は、
姿勢を遣ると手を離した。

男がガッカリした顔になる。




男になど、良い思いをさせるもんですか。



沸々と湧き上がる怒りに、
私はどうやって手を下さず責めてやろうかと考える。






考えると、
僅かな胸の痛みが消えてゆく。



きっと、今日も私は笑って帰宅できる。


笑って旦那を迎えられるわ。




_____口元がひくついた。

私はそれに気付かないフリをして、

ムチを振り上げた。























〔終〕




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