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あいの向こう側
第27章 夕暮れに
『えーと、
2105。にーいちぜろごー』

2105室が新しい自宅だ。


前は一軒家だったから、
21階に居住すること自体に違和感を感じる。


ホテルにでも泊まってるみたいだ。




『ただいまー』
スペアキーで開くと、
玄関にパンプスがあった。


『ママ!帰ってんのー?』
ローファーを脱いで駆ける。



リビングのソファーでママが寝息を立てていた。

足を止める。

掛け毛布を引っ張ってきてママに掛けた。



自分の部屋に入り、
課題を解いていく。


こうして「するべきこと」で時間を埋めると、
誤魔化せてる気がする。



(何を?)


頭に浮かぶ自問。


夕真は、無視して課題を続けた。








(帰りたいなぁ)
夕飯にレトルトカレーを食べて、
シャワーをして部屋に戻りふと思った。



悠聖とタノスケと毎日笑い転げていた街に。


だけど夕真は知っていた。


どこに行くことも不可能であり、
どこに行っても何も変わらないだろう自分を。





ピリリ……………♪♪♪



メール受信音に、携帯に飛びついた。


サブタイトルに【暇つぶし】とある。

本文を開くと、タオルを被って顔に落書きをした悠聖の顔があった。


『ぶふっ!!バカじゃないの』
笑いが止まらない。


「バーカ、落ちるの?顔の落書き」とメール文を打ち返す。



「姉貴のメイク道具だから落ちるはず!!
つか落ちなきゃヤバいから」



脇腹が痛い。

涙が滲んだ。





『ゆーまー?!
居るの-?』

廊下からママが呼んでる。


『い、いるよもちろんー』



『ママ夜勤行ってくるからねー、
戸締まりちゃんとね』



『へーい』

今夜も一人だ。





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