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あいの向こう側
第5章 ひとつぶのセンチメンタル
父は水道工事を生業としていた。

肉体労働者だった。


上背があり、
筋骨隆々………
ではなく、
ひょろっとやせ型だ。



50を過ぎて早期退職をし、再雇用でアルバイトをしていた。


泥に汚れた作業着を着た父の姿が脳裡に浮かんだ………………



『ただいま。
紀子さん、対処をどうもありがとうございました』

わたしは生家の古びたガラス扉の玄関をカラカラと開け、
中に入って頭を下げた。


義理妹は『お義姉さん!
お義父さん、つい先ほど病院から戻って来たんです』
と駆け寄る。


親戚たちが数人、
居間で柩の周囲でうろついていた。
『あ、
帰って来たのね…』
叔母にあたる女性がわたしを見上げた。


『すみません。
何から何までお世話になってしまって………』
わたしは恭しく一礼した。



柩の父は、
眠っている様に見える。

『苦しまなかったのがせめてもの……
だそうよ。
お医者様がおっしゃってたわ』
叔母はハンカチで涙を拭う。









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