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あいの向こう側
第9章 blue
そのまま寝てしまって朝慌てて起きて『家庭教師のバイトがあった!』
と駆け出して行くこともしばしばあった。












『へえ〜、あのバイトくんがねぇ?』
社内食堂にてランチをとりながらサリが言う。

『うん。
何を考えてんだろーね?』私は煮魚定食に付いている味噌汁を啜った。


サリは「ダイエット」とサラダとパウチゼリーのみ。
茶髪をアップに纏めている。丁寧に引いたアイライン、付け睫。磨いた長い爪。
どちらかというと、サリのがそういう話が似合う。
『聞けばいいじゃん、
相手に』


『うーん………
聞いたところで軽くショック受けるだけだなぁと思ってさぁ。再確認つうか…』
私はカレイの白身を箸で掬った。

『まぁね、「あたしたちセフレだよね?」なんて言わないしなぁ』

『でしょ?
……カレイ美味っ』

『いいじゃん、
居酒屋くん美形じゃん〜。ヤれるだけラッキーかもよ?』

『………サリは本当に年下嫌いだよねぇ……』

『あ、興味ないの分かる?(笑)』


サリは何故かくたびれた40代男性(しかも大概妻帯者)が好きで、
今は経理課の係長に執心していた。
「仕事が出来たらダメなの!適度に落ちぶれてないとガッツが湧かないんだよねぇ。スーツじゃなくて背広って感じじゃないと」
らしい。更に「痩せてて小柄」が好み。


『相手も何も言わないんでしょ?
ならいーじゃん、今を楽しんじゃえば?嫌なら来ないでしょーよ』
サリはポーチを取り出し爪を磨き出した。
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