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あいの向こう側
第9章 blue
マスターは驚いた風もなく、
『ありますねぇ』
とグラスを拭きながら頷いた。



『………手に余るくらい周りに女性が居ても、
魅力のない女性の家に通いつめる?その人は容姿にも内面的にも優れているのに』


マスターは穏やかに微笑みながら、
『うーん……
あなたの言ってるのは男女においてですよねぇ?』
と訊ねてきた。


私は無言でコクリと頷いた。


『自分の欲求を満たしてくれるからじゃないですかね?
一見素っ気ない繋がりに見えても、
望むものを与えてくれるならば十分な理由になると思いますよ』



私は6杯目のグラスを持ちくるくると廻した。


『それに、
そう思っているのは片方だけかもしれません』




マスターの話は抽象的だった。
だけど言っていることは理解できて、

私は久しぶりに凄く気持ちがいい酔いを体感して帰路についた。


『………あれ?』


自宅アパートのドアの前で誰かが座っているのが見える。
『あ、帰って来た(笑)』
すっくと立ち上がったのは早瀬蒼生だ。

『どしたの?
今日はまだ水曜日だよ?』
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