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第8章 誠一の嘘。

『誠一、これ……』



『紗英、これで自由になったほうがいい。この家を出て、自由に――』



『いやぁぁぁ！！！何で…何で離婚…？やっぱり誠一も子供ができない私は用済みっておもっているのね！！』



『紗英、そういうわけじゃ……』



『うぅぅっ……うっ…わかった、じゃあ愛人作ってもいいから……だから私の夫でいてよ。お願いだから――』



愛人を作って子供を作ったって
今の紗英の精神状態じゃきっとうまくいかない。
紗英を、やっぱり解放してあげるのが一番だ。



『やだ、誠一！行かないで！お願いだから、行かないで！！』



振り向いたら――
泣きじゃくっている紗英をみたら離婚届を破り捨ててしまう。
だから振り返らずにこのドアから出ていくしかない。