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第1章 恋は盲目

私は桜の花が好きだった。
この学校は敷地内にたくさんの桜の木が植えられていて、春になると一斉に花開く。
この学校を志望した一番の理由も、見事なまでの満開の桜を間近で見たかったからだった。

私は桜の花のように綺麗ではない。でも、自分の中で勝手に仲間意識のような感情を抱いている。
おかしな話だ。

一年生の時だった。
時期が過ぎ、殆ど散ってしまった桜に目を向ける者なんてもう居なかった。
放課後。誰も居なくなった夕暮れの校庭の隅で、並んだ桜の木を一人で見上げていた。

もうすぐ完全に散ってしまうであろう花片に寂しさを感じつつ、その姿を目に焼き付けるようしばらくの間その場所に佇んでいた。

名残惜しさを残しながらも、そろそろ帰らなければと踵を返した時だった。
離れた場所に、私と同じように桜の木を見上げている人が居る事に気が付いた。