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intimidation love
第3章 吉野と一葉

先輩は空いていた隣の席を指し、何故か私ではなく友人に向かって尋ねた。
「この席って借りても大丈夫?」
「は、はい!大丈夫です!しばらく戻って来ないと思うので!」
二つ返事で勝手に了承する友人に、何故断ってくれないのだと心の中で恨み言を述べる。
目の前で真っ青な顔をしている私の事など、友人の眼中にはないのだろう。
「ありがとう」
にこりと先輩が微笑むと、友人の顔が益々真っ赤に染まる。
…あざとい。
そうやって嫌味のない笑顔を振り撒くのも、あえて私ではなく最初に友人の方に話し掛け許可を得た事も。
「食べ終わるまでここで待ってるから、あとでちょっと付き合って貰ってもいい?」
先輩は私の隣の席に腰を下ろし、にこやかに尋ねて来る。
「駄目?」
微笑んでいる先輩の目の奥が少しも笑っていない事に気付き、ぶるりと体が震えた。
舞い上がっている友人は、そんな事には全く気付いていなかった。
周りも、誰も気付かない。
「…わかりました」
加えて四方八方からの突き刺すような視線に怯え逃げ場を無くした私は、小さく頷く事しか出来なかった。
拷問にも近い地獄の時間から早く逃れる為に、さっさと弁当の中身を口に運んではろくに咀嚼せずに飲み込む。
味なんて、勿論わかるわけもなかった。
「食べ終わった?」
「…はい」
周りの女の子達と会話を楽しんでいた先輩は、私が食べ終えるのを確認してから席を立つ。
教室を出た後も廊下を歩く先輩に向けられる視線は相変わらずで、生きた心地がしなかった。
中には、先輩の後ろに続く私を敵視するように鋭い目を向けて来る生徒も居る。
単に好奇の目で見られるだけなら、まだいい。
極力目立たないよう俯くいてはいたが、きっと無駄だろう。
それでも、堂々とした態度で先輩の後ろを歩く勇気は私には無い。
元々そこまで社交的でもない私には、こんな中でも毎日平気で過ごしている先輩がまるで別の生き物のようにすら思えた。
やがて辿り着いたのは、普段から封鎖されていた筈の屋上の扉の前だった。
「…鍵掛かってるんじゃ」
「んー、案外簡単に壊れるもんだなと」
「…壊したんですか?」
「壊れたんだよ。それに、頑丈じゃないのが悪いと思わない?」
悪びれもせずにへらへらと笑う先輩に、冷ややかな視線を送る。
難なく開いた扉の先へと、私は渋々足を踏み入れた。
「この席って借りても大丈夫?」
「は、はい!大丈夫です!しばらく戻って来ないと思うので!」
二つ返事で勝手に了承する友人に、何故断ってくれないのだと心の中で恨み言を述べる。
目の前で真っ青な顔をしている私の事など、友人の眼中にはないのだろう。
「ありがとう」
にこりと先輩が微笑むと、友人の顔が益々真っ赤に染まる。
…あざとい。
そうやって嫌味のない笑顔を振り撒くのも、あえて私ではなく最初に友人の方に話し掛け許可を得た事も。
「食べ終わるまでここで待ってるから、あとでちょっと付き合って貰ってもいい?」
先輩は私の隣の席に腰を下ろし、にこやかに尋ねて来る。
「駄目?」
微笑んでいる先輩の目の奥が少しも笑っていない事に気付き、ぶるりと体が震えた。
舞い上がっている友人は、そんな事には全く気付いていなかった。
周りも、誰も気付かない。
「…わかりました」
加えて四方八方からの突き刺すような視線に怯え逃げ場を無くした私は、小さく頷く事しか出来なかった。
拷問にも近い地獄の時間から早く逃れる為に、さっさと弁当の中身を口に運んではろくに咀嚼せずに飲み込む。
味なんて、勿論わかるわけもなかった。
「食べ終わった?」
「…はい」
周りの女の子達と会話を楽しんでいた先輩は、私が食べ終えるのを確認してから席を立つ。
教室を出た後も廊下を歩く先輩に向けられる視線は相変わらずで、生きた心地がしなかった。
中には、先輩の後ろに続く私を敵視するように鋭い目を向けて来る生徒も居る。
単に好奇の目で見られるだけなら、まだいい。
極力目立たないよう俯くいてはいたが、きっと無駄だろう。
それでも、堂々とした態度で先輩の後ろを歩く勇気は私には無い。
元々そこまで社交的でもない私には、こんな中でも毎日平気で過ごしている先輩がまるで別の生き物のようにすら思えた。
やがて辿り着いたのは、普段から封鎖されていた筈の屋上の扉の前だった。
「…鍵掛かってるんじゃ」
「んー、案外簡単に壊れるもんだなと」
「…壊したんですか?」
「壊れたんだよ。それに、頑丈じゃないのが悪いと思わない?」
悪びれもせずにへらへらと笑う先輩に、冷ややかな視線を送る。
難なく開いた扉の先へと、私は渋々足を踏み入れた。

