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intimidation love
第3章 吉野と一葉
「…あの、他に用が無いなら教室に戻りたいんですけど」

とはいえ、正直言って教室に戻るのは憂鬱だった。
一体先輩とはどういう関係なのか、一体どうやって知り合ったのか。
私が教室に戻ったら、質問攻めに合う事はきっと免れない。

私のクラスにも、先輩に好意を抱いている女の子達が何人も居る事は知っている。
先輩の事は好きだけれど、それ以上に私は彼女達に敵視される事を恐れた。

先輩を巡って口論を繰り広げる女子達を、私は何度か見掛けた事がある。
口論で済むだけなら、まだマシな方だった。
髪の毛を掴み、引き摺り、しまいには殴り合うその光景に私は戦慄した。
彼女達に巻き込まれたくないと思う気持ちは、今でも変わらない。
自分から先輩に接触しておきながら誰にも知られたくないだなんて、随分と都合の良い考えだと自分でも呆れてしまう。

教室には戻りたくないけれど、遅くなればなる程きっと女子達は私と先輩の関係を勘繰るだろう。
戻るなら、少しでも早い方がいいに決まっている。

「まだ昼休み終わってないんだし、別に急いで戻らなくてもいいでしょ」

人の気も知らないで、よくそんな事を平気で言えるものだ。

「…いえ、もう行きます」

すると先輩は、急いで戻ろうとしていた私の腕を掴んだ。

「何勝手に戻ろうとしてんの。俺、戻っていいなんて言ってないよね?」
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