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intimidation love
第3章 吉野と一葉

「ていうか、話変わるけどさ」
「何ですか?」
私はぼんやりと、先輩の話に耳を傾ける。
「前から思ってたんだけど、ヨシノちゃんの名前って染井吉野が由来だったりする?」
まさか先輩にそんな事を聞かれるなんて思っていなかった私は、とても驚いた。
「…よくわかりましたね」
「それくらいわかるって。わざわざ名前にその漢字使うとか、由来なんてそれくらいしか思い付かないし」
昔は、よくからかわれたものだ。名前なのに苗字みたいだと、何度も言われた。
確かに、フルネームで自分の名前を書くと苗字が二つ並んでいるようにしか見えないので妙だなとは思う。
でも、私は吉野という自分の名前が嫌いなわけではなかった。
「…私は先輩が桜の種類を知ってる事に驚きました」
「あのね…知らない人の方が絶対少ないでしょ。それに俺、他の花は全然詳しくないけど桜は結構好きだよ?」
知っている。
初めて言葉を交わした時、先輩が言っていたから。
きっと先輩は、覚えていないだろうけれど。
「そういえば、ヨシノちゃんも最初屋上に来た時桜が好きだって言ってなかったっけ?」
「言いましたけど…」
「ヨシノちゃんが桜好きなのって、もしかして自分の名前に影響されて、とか?」
何だか答え難い質問だ。
そこで頷いたら、まるで自分が大好きだと公言しているみたいじゃないか。
かといって、そんな事で嘘をつくつもりもなかった。
「…いけませんか?」
絶対に馬鹿にされると思っていた。
でも、にこにこと笑う先輩の顔はどこか嬉しそうにも見え、私はそれを不思議に感じた。
「じゃあ、俺と一緒だ」

