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intimidation love
第4章 膠着
先輩が椅子から立ち上がるのを見て、私は部屋のドアを開けて後ろに下がった。
でも、先輩は中々部屋を出ようとはしなかった。

「ここが自分の家って事が、ネックだよね」

「…どういう意味ですか?」

「別の場所だったら俺を置いて逃げられたのにね?でも今ここで逃げたら、部屋に俺を残しちゃう事になるもんね。さすがにそれは困るでしょ?」

全て、計算した上での行動だったのだろうか。
私に逃げ道を、作らせない為に。

「…帰って下さい…じゃないと…!」

「じゃないと、どうするの?誰か呼ぶ?」

「………」

「大好きな先生でも呼んじゃう?」

今日ばかりは、ハル君を頼れない。
先輩を家の中に招いてしまった理由を、全部説明しないといけなくなってしまう。
そうなったらハル君は絶対に、今以上私に失望するに決まっている。
既に私はお荷物でしかないのに、これ以上迷惑を掛けるような事はしたくない。

「…呼びません」

「そう?俺は別にどっちでもいいけど」

何故なのだろう。
先輩は、どうして私なんかに。

「何で…私なんか構うんですか?さっきだって、廊下で女の人とあんな事してたじゃないですか…先輩ならいくらでも、他に相手が居るのに…」

唇が震え、喋っているうちにどんどん語尾が小さくなって行く。
ゆっくりと近付く先輩に、屋上での光景が甦る。
…結局、あの時と何も状況は変わらない。
唯一違うのは、今の私には逃げ場が無いという事だけだ。
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