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君と甘い鳥籠で
第1章 1
私、子どもが出来ないかもしれない。
それは生涯を独身で過ごす事をも意味する。頭を過った不安を振り払う様にグレーテは首を振った。
大丈夫。もともと毎月来ていた訳じゃないし、もっと大人になったら再開するもの。
それに……子どもが苦手な男性だっているかもしれないじゃない?
根拠のない希望。でも、グレーテはそれに縋るしかない。じわじわと迫る例えようのない恐れに小さく身体を震わせて、グレーテはシャラシャラ鳴る鎖を引き連れ、逃げるようにハンスのベッドに駆け込んだ。頭から布団を被り、小さな身体をさらに小さく丸めてハンスの匂いに包まれる。
大丈夫、私は一人じゃない。
兄さんが、ハンスが傍にいてくれるもの。
私を置いて行ったりしないもの。
グレーテは病気の時の事をほとんど覚えていない。ただ、ハンスの優しい笑顔だけが彼女の記憶に残っていた。
朦朧とした意識の中、目を開くといつも傍に居てくれた。力の入らないグレーテの手をギュッと握り『大丈夫だよ』と微笑みかけてくれていた。
たった一人の私の家族。
優しくて、強くて、頼りがいがあって、格好いい。
大好きなハンス。
私の、兄さん……
ハンスがグレーテを意識する様になったのは魔女に囚われた時にまで遡る。
見目麗しい兄妹を捕まえた事を悦んだ魔女はまず、ハンスを観賞の後、食用とする為に鳥籠に閉じ込めた。そしてグレーテを小間使いとしてこき使い、夜は慰みモノとしてその幼い身体を弄んだのだ。
夜毎閨から聞こえるグレーテの甘い悲鳴。ハンスには初めソレが何か分からなかった。でも日毎に悦びを滲ませ、媚びる様な嬌声へと変わっていく様子に次第に心を乱されて。