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君と甘い鳥籠で
第1章 1
 グレーテルが心配で助けたい、止めさせたいと思うのに、同時にその声に昂り、そんなグレーテルを間近で見たい、自分が啼かせたいと思ってしまう。身体がどうしようもなく熱く疼き、自身は痛む程に存在を主張する。納め方の分からないハンスには張り詰めるソレに触る事さえ出来なくて、何度も鳥籠に身体をぶつけては痛みで気を逸らしてやり過ごす。そんな自分が醜く思え、深夜遅く魔女が寝静まるのを待って会いに来るグレーテにハンスは閨での出来事に触れる事も出来ず、ただ彼女に一人で逃げるよう説得し続けた。しかし、グレーテは黙って首を振り、ハンスの手を胸に抱き寄せて静かに涙を流すばかりで頑として逃げようとしなかった。時に熱を残したままのグレーテの瞳にハンスは激しく心を乱されながら離れない彼女に安堵し、手を繋いだままどちらからともなく眠りに落ちる、そんな夜を繰り返していた。
 命を危険に晒された状況で何週間もそんなグレーテの姿を目の当たりにし続けてて、特別な想いを抱くなと言う方が無理な話。グレーテの機転で終わりを迎えた時、ハンスの想いは何にも揺るがない程に強くなっていた。魔女とは言え命を奪った罪の大きさに震えるグレーテを抱き締め、ハンスは一生を掛けて彼女を幸せにすると心に誓ったのだ。
 
 閨での行為が何であったのか、もうハンスにも分かっている。知った時の衝撃たるや……
 どんなに愛しく、恋しくても自分はグレーテを守るしか出来ない。兄である自分にグレーテをあんな風に啼かす事は許されないのだ……

 僕は自分の気持ちを君に告げる気なんて、更々なかったんだよ。あくまでも兄として、君の幸せを願っていたんだ。
 それなのに……君の身体は成長を止めた。

 月のモノが止まっていては子どもは出来ない。そして、そんな女性を伴侶に求める酔狂な男はまずいない。事実、グレーテに想いを寄せていた男達は流行り病に罹ったせいでグレーテは子どもを宿せない:かもしれない|とハンスが囁くと、全員がグレーテに声を掛けなくなった。執拗に仲を取り成すよう言い寄っていた男でさえも、だ。
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