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あおい風 あかい風
第2章 キス
 何度か マットレスの上で長い脚をかかえて ひとり待つ大輝を思い浮かべた。スポーツ刈の頭を膝にのせ 入り口を見張っている大きな背中。ふりきって帰宅した。

 部活は休んだ。
  彼とのキスを思い出しては 涙ぐんだ。

  受験する生徒にあわせて 三年生は 早めに試験がはじまる。試験週間に入った三年生がいなくなったので 練習にではじめた。


 更衣室を出て グラウンドへ向かうとき 下校する大輝をみかけた。隣に マドンナと呼ばれる戸渡結月がいた。結月が 長い髪をゆらして 華やかに笑いながら大輝に話しかけている。みたこともない優しい笑顔で それに応えている大輝。ふたりの間の距離は とても近い。

 たちすくむ、というのは こんなかんじなのだ。
 全部 知っていたし 自分のこともわかっていた。
 でも とてもくるしい。

「碧 これからぁ?」

 親友の 早川怜子に声をかけられ 自分の世界からぬけだした。

「ああ。いい眺めだよね。マドンナとゴールデンボーイ。絵に描いたようなカップルじゃん。 えっ・・・碧 泣いてるの?」
 「ふぇーーーん。怜子ぉぉぉ。泣いてないよぉ」
 「なに、なに? しっかり泣いているんだけど。どうしたの?」
 「怜子ぉぉぉ きいてぇぇぇ」

 くるしくて かなしくて 誰かに聞いてほしかった。

 「よしよし。いいこ、いいこ。おねえさんが聞いてあげるから もう泣かないのよ」

  ひと通り話すと 泣きやむことができた。胸にキスされたことなんかは黙っていた。
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