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あおい風 あかい風
第2章 キス
倉庫は 小さな電球がひとつぶらさがっているだけなので 暗い。道具類がひしめきあって置いてある。閉め切ると やたらカビくさい。どうして ここなんだろう?
「おれ 話すのが 苦手だから」
でも 楽しそうに マドンナと話してた。
「あんなの わるかったよな」
わるい、とか そんなものじゃあないんですけど。
「つい ふたりっきりになれたから、つい」
ふたりっきりになったら キスするという展開は ふつうではありませんけど。
しばらく ふたりとも黙っていた。
「ここから やりなおしたい」
なにをやりなおすの? マドンナとつきあっているくせに。
思わず こころの声が 本物の声になって 口からとびだした。
また沈黙。
「マドンナ、って だれ?」
みると 大輝は マットの上に正座している。白いTシャツに黒いスウェット。いつもの格好だけど 顔つきが少し違う。いつもの無表情ではない。少し眉を寄せ 膝に手をおき 広い肩がすぼまっているのは 叱られた子供のよう。今の彼は こわくない。
「戸渡結月さん」
「戸渡? 結月? いとこだけど」
「いとこで 恋人なの?」
また沈黙。
「いとこ、だけど 恋人じゃあない」
「いとこだけ?」
「うん。いとこだけ。結月には 大学生の恋人がいるし」