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あおい風 あかい風
第8章 髪飾り
 「だいちゃん あのこのこと 押し倒してキスしたらしい」
 「えっ、うそっ。あんな小さな娘を。よく潰れなかったなぁ、あのでかい図体で押し倒されて」
 「わたしも そう言った。しかも 倉庫かなんかで。大輝だよねぇ」
 「大輝だ。こわい顔して キスしたんだろうなぁ」
 「うん。きっとそうよ。大輝だもん」

 愛おしくて 懐かしい大輝。

 あのとき「日常的にキスするのか」とも聞いてきた。
 「日常的」と言う言葉で 大輝が伝えたかったことが 今わかる。好きな人とずっと一緒にいるのか、と聞いたのだ。

 「ゆうちゃんは チェリストになるの?」
 「ううん。はるにぃのお嫁さんになる」

 「ほら。こんな話だってできるだろう?」
 不思議だ。こんなに胸が痛いのに 陽輝といるのなら耐えられる。

  陽輝が 眼鏡をはずして 髪飾りの隣に置いた。優しい目が 近くになった。
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