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あおい風 あかい風
第9章 乱
 目が醒めるやいなや 陽輝の姿をさがした。
 ベッドは空だ。白いシーツが果てしなく広がる海のように感じられる。置き去りにされた?
  恐ろしくてパニックになりそうだった。
 水の落ちる音が聞こえた。バスルームだ。

 一人に慣れている陽輝は  突然バスルームのドアが勢いよく開いて 驚いた。
 裸で 怯えて泣き出しそうな結月を見て もっと驚いた。
  濡れるのもかまわず 陽輝にしがみついてくる。押し付けられる豊かな乳房の感触が 昨夜の痴態の数々を思い出させる。結月の動悸の激しさが伝わってくる。

 姿が見えないだけで こんなに怯えるのか。それなのに あからさまに求められることに戸惑い、突き放し、置き去りにしようとした。
 むごいことをしてしまった、と胸が痛む。

 「一緒に シャワーを浴びる?」

 濡れた髪がはりつき いっそう小さな顔に見える。しがみつく腕の力は 一向に弱くならない。陽輝は 結月の顔をすくい上げるようにして キスした。
 青ざめ冷たくなった唇を もみこむようにすると、やっと腕の力がゆるんできた。結月は 唇で大輝の唇を挟みながら舌を往復させる。

 「いつ こんなことをおぼえたんだ?」とまた思ってしまう。
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