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人間と牛
第7章 いよいよ
(はあ……)
全くおかしな事だ。
外部に漏れたら困るということで医者も呼んでもらえず、少女は土に埋められ亡くなった。男性が自分たちのことを優先したバカバカしい話だ。
お陰で食事も喉に通らない。

(ああ、この地獄は、いつまで続くのだろうか……)
私は、ぼんやりと明るく光る、丸い天井照明を見上げながら思った。
(帰りたいなあ……)
こんなことにさえなっていなければ、目の前で見る痙攣なんてなかったし、あの子だって病院で助かっていたことだろう。今頃、私はきっと家族と一緒にご飯を食べながら、楽しく会話を弾ませていたことだろう。

「おいおい食べないのか?」
こちらを通りかかった男性に声をかけられた。

「食べられる気がしないんです……」
先ほどの、あの姿を見てしまっては食欲が失せるのも無理ない。

「そうは言ってもなあ……本当に大変なのは明日からなんだよ?」
分かってる。そんなこと分かっているけど……。

「それって、搾乳という奴ですか……?」
搾乳。ここに来たばかりの時に、あの男性が教えてくれた言葉。意味はよく分からないけど、喜ばしいものではないのだろう。

「お、知ってるのか」

「名前だけは……他の男性に聞きました……」

「ふうん……ねえ、とにかく食べな?さっきの事で不安なのは分かるけどさ」
嘘だ。分かる訳ない。
平気で人を殺すような奴が、人の気持ちなんて分かる訳ないだろう。

それに、どうせ私たちに栄養を蓄えさせて、人乳の性質を上げるだけ。その為に、ここまで豪華な配膳をしている。そんなこと分かっている。分かっているからこそ……従いたくなくなる。

「……あの」

「ん?」

「先ほど痙攣を起こした彼女、なぜ痙攣を起こしたのでしょうか」
こんなこと聞いていいのか分からない。けど気になったことは突き止めたい。

「『なぜ』って、いきなり此処に連れてこられたからだろ。ストレスとかの問題じゃないの?」
もしストレスが原因だとしたら、どこか辻褄の合わない場所がある。

「ストレス……ですか……、でも彼女、痙攣の仕方が少し不思議だったんです」

「痙攣の仕方?」

「はい……もしもですよ、あの痙攣が、ストレスが原因じゃないとしたら……何が考えられます……?」
彼女が痙攣したとき、少し感じた独特な匂いと発作。
先ほどから感じる嫌な空気感。

「……まさかっ!!」
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