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混浴露天風呂・痴漢ワニに囲まれて
第2章 旅立ち
梅雨の止み間。

前日まで雨が降り続いていて、心配だった空模様。

晴れ上がった空を見上げて、家を出て最寄り駅に向かった茉莉子。

前に行ったときは、夫の車で向かったが、茉莉子はペーパードライバー。

公共交通機関で温泉宿を目指した。

JR線を乗り継いで温泉宿の最寄駅に向かい、そこから歩く予定。

平日。ラッシュの時間に時間に駅に着いて、しかも、通勤の人たちが乗り込む車両とは反対側のホームで茉莉子は列車を待った。

反対側のホームはいつものように凄い行列。普段の茉莉子はあの列に並ぶ。それが、今日は反対側のホームで椅子に座って眺めていた。

いつもなら、あの辺りにと思った。見慣れた顔ぶれ。毎日、乗っていると顔を覚えてしまう。

同じ車両の同じ扉から乗るのだから。ただ、誰も反対側のホームにいる茉莉子に気が付いていない。いつものスーツ姿ではなく、カジュアルな服装だし、帽子も被っていて、わかるはずがない。

茉莉子は、解放感を味わっていた。あの列に並び、次の満員電車に乗って行く。それからの解放。

ホームにガラガラとは言わないが、座席が満席ではない車両が入ってきた。茉莉子が乗る列車。ほぼ同時に、反対側のホームに、茉莉子がいつも乗る列車が入ってきた。

隣の車両は押し合い圧し合いの大混雑。

それを窓越しにロングシートに座って眺める茉莉子。いつもなら、あの押し合い圧し合いのなかに自分はいる。でも、今日は、ここからそれを眺めている。

解放感があった。

列車が走り出した。滅多に向かうことがない方向に列車が走る。

外の景色は相変わらず、家々。そして、マンション、アパート。

住宅地を走り続け、遠くに山々が見え、家並みの切れ目から海が見えた。

駅に停車するたび、人が降りて、徐々に車内の人が減っていった。
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